家康公クラフト　酵母を探せ

来年のＮＨＫ大河ドラマ「どうする家康」をきっかけに「家康公」と「クラフトビール」をつなげて地域を盛り上げようという計画が静岡市で始まっています。名付けて「家康公クラフトビールプロジェクト」。カギは「酵母をみつけろ！」です。

（ニュースディレクター・中村マゼラン太郎）

（静岡大学 人文社会科学部［中世スペイン史］ 大原志麻教授）

「ビールを家康が飲んでいた可能性は？」

静岡大学人文社会科学部で中世スペイン史が専門の大原志麻教授です。去年、大学内の研究室で「中世のビール」の再現に成功しました。その実績が買われ、静岡市から「家康ゆかりの地をアピールするビールを開発してほしい」というオファーを受け、同僚の教授たちと議論を重ねています。

（静岡大学 人文社会科学部［法学科］横濱竜也 教授）

「（家康が生きていた時代に）イギリス船が来ていて、その荷物リストの中に『ビール』と書いてあり１６１３年のこと」

（静岡大学 人文社会科学部［日本史専門］松本和明 准教授）

「飲んだ可能性はゼロではない。ただ歴史は資料に書いていないことは言えませんので」

家康がビールを飲んだ史実は確認できず、いきづまっていたところ、理系の教授陣からアイデアが出されました。カギは「酵母」でした。

（静岡大学 理学部［生物科学科］丑丸敬史 教授）

「以前　南アルプスの花から酵母をとることに一回チャレンジしたことがある」

このアイデアをもとに、ビール作りに使える酵母を、今回は家康ゆかりの地から探し出そうということになったのです。

（大原教授）

「静岡と家康ってあまりつなげてもらえないからクラフトビールを通して酵母で歴史を伝える」

始まった酵母探し。まず家康ゆかりと言えばやはり埋葬されている久能山東照宮。一行が探しているのは？　花です。酵母は花の蜜に集まりやすいため、花を採取して、そこから酵母を見つけ出そうというのです。

酵母によって個性の違いがあり、アルコール成分をつくり出す能力に加えて酸味や風味、香りにも大きく影響します。酵母がありそうな花探しにも力が入ります。

こちらは、家康が自ら植えたと伝えられる梅の木。明治時代に駿府城から植え替えられました。

（静岡大学 人文社会科学部［日本史 専門］松本和明 准教授）

「“御手づから植えられた”と書かれている」

（久能山東照宮 竹上政崇 権禰宜）

「家康公はよく言われるように“健康オタク”健康のために梅干しは日本古来の食べ物で（家康に）好まれたのではないか」

花が咲くのは来年２月。なので、今回は、木の葉を採取して“家康酵母”を見つけられるかチャレンジします。

（丑丸教授）

「葉っぱからも酵母が取れる実績があるのでお手植えをされた家康公とつながっている感じがして家康公から（酵母を）いただけたらうれしい」

採取したものは早速、大学の研究室で分析です。培養液に漬け込まれ、電子顕微鏡などを使って酵母を見つけ出す作業が行われます。この中から、見つけ出さなくれはならないのが「サッカロマイセス・セレビシエ」という酵母です。形や大きさなどのわずかな違いをみて判別しますが、“５０個のサンプルから１つみつかればいい方”でなかなか見つかりません。

（酵母探しの作業をする学生）

「違うときは違うと（サッカロマイセス・セレビシエでないと）がっかりしながら　また次を見ていく」

大学では、ことし中に「サッカロマイセス・セレビシエ」酵母を見つけ、１０個ほど選びたいということです。

（丑丸教授）

「（静岡ゆかりの）家康公には大御所時代と竹千代時代があるので若々しいビールがあってもおもしろいしどっしりしたビールがあってもおもしろい」

酵母の採取とともに進めているのが完成した時のビール瓶のラベル選びです。一行が目をつけたのが、ある屏風絵でした。１７世紀に描かれたというこちらの屏風。富士山とともに三保の松原など静岡市の名所が描かれています。

（県富士山世界遺産センター 松島仁教授）

「興津の清見寺が描いてある。このまんなかの人物こそ徳川家康だと考えられる人物」

家康と静岡市との深いつながりが示されているこの作品。イメージにぴったりで、ラベルの候補にできればと大原教授は意気込みます

（大原教授）

「静岡市の歴史拠点と家康のつながりが一目で見て取れる静岡市の家康公クラフトのラベルになると非常にいい」

果たして“家康酵母”は見つかるのか。“家康公クラフトビール”は完成するのか。期待は高まります。