篆刻のやり方:基本的な知識や技法を解説 |
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普段書に親しんでいる人でも、篆刻となると難しそうだとしり込みしてしまう人も多いと思います。 篆刻自体、非常に奥が深く、その本質を極めることは至難の業ですが、趣味としての篆刻は基本を学べば誰でも気軽に取り組め、楽しむことができます。 今回は篆刻に必要な用具や技法を解説していきます。 ![]() 印刀いんとうは書道における毛筆にあたります。そのため鉄筆ともいいます。 中鋒(両刃)と偏鋒(片刃)がありますが、一般的には中鋒が使われます。 ポイントとなる刃先の角度は、厚刃すぎると鈍重な、逆に薄刃にすると切れすぎて浮薄な感じになってしまいます。 印刀は握る部分が円筒のものがよく、大きい方が刻するときに線が委縮しません。 印刀が切れなくなったら砥石でときます。 印刀の持ち方刀の持ち方は基本的には筆の持ち方と一緒です。 親指と人差し指で持つのが〈単鉤たんこう法〉さらに中指を添えるのが〈双鉤そうこう法〉です。仮名などに用いる小さな印には単鉤法がいいでしょう。さらに大きな印には全部の指で刀をつかむ〈握刀あくとう法〉を用います。 石印材篆刻の材料として石材が最も適しており、奏刀が自由で多様な表現ができます。 石印材は現在おもに中国から輸入されています。 印面に不純物がなく、ヒビのないものを選びましょう。 印床(篆刻台)印床いんしょうとは、布字をするとき、印を刻るときに印材を固定する台のことを言います。 初心者が印材を左手に持ち、右手で刻る場合、右手の集中力が石を握る左手にとられてしまうため、印象を使用することをお勧めします。 楔くさび式とネジ式があり、ネジ式の方が便利です。また、木や竹などに刻るときも必要です。 初めから印床を使わない人もいて、展覧会などに出品する大きめの印を刻る時にはあまり用いません。 印泥(朱肉)印泥いんでいは水銀と硫黄を焼いて作った銀朱に、モグザとヒマシ油を混合したものです。中国製は繊維が細かく泥状になっています。いんでい印泥は水銀と硫黄を焼いて作った銀朱に、モグザとヒマシ油を混合したものです。中国製は繊維が細かく泥状になっています。 高級品ほど腐りやすいため、時々ヘラでかき回して泥質を均等な状態にして使用しましょう。 西泠印社せいれいいんしゃ製の「光明こうめい」「美麗びれい」が有名です。 印箋印箋いんせんとは、印を押す用紙のことを言います。 表面が均質で油をよく吸収する紙が最適です。 枠が印刷された既製品もありますが、良いものは少なく、中国産の薄めの画仙紙を使うか、これらを素材にしたものがいいでしょう。 印褥印褥いんじょくとは、印を押すときの台のことを言います。 あまり弾力のあるものでは印はきれいには押せません。手鏡てかがみなどのガラス板の上に数枚の画仙紙をのせるのがちょうどいいです。 印矩印矩いんくとは、印を押すときに、位置を決めるために用いる定規です。 L字型・T字型が一般的です。 また、通常1度押したら、色が薄かった時に2度目はズレてしまいます。しかし、印矩をつかえば印の位置が決まっていれば、同じ場所に2度重ね押しができます。 筆・墨・硯筆は、墨用・朱墨用それぞれに穂先のきく小筆を1本ずつ用意します。一般的に中国製の写巻がよくつかわれます。 墨は、普通のもので大丈夫です。朱墨は銀朱の純度の高い国産品が、印面へのノリもよく、おすすめです。 硯は、印稿を作るときや布字のときに用い、墨用・朱墨用それぞれ必要ですので、二面硯があると便利です。 そのほかの用具手鏡は布字(字入れ)の修正するときに使います。 ブラシは刻した印面の石くずをはらうのに用います。 紙やすり・耐水ペーパーは、印面を平らに整えるために使用します。600~800番。 高校書道の授業では印面を平らに整える作業は難しいため先生の方であらかじめ済ましておいた方がよいです。 印の形式紹介 姓名印姓名印せいめいいんは個人の姓名を刻したもので、一般的には白文が用いられます。 これは、秦漢以来の官私印が白文であったことに由来しています。 雅号印雅号印がごういんは姓名印と連ねて押す落款印です。朱文が適当です。 姓名印は正式である白文とするため配合上、朱文を用います。 引首印引首印いんしゅいんは書幅の右上に押します。 多くは長方形・長楕円形で好みの句や、堂号などを刻ります。 主に白文印が使われます。 姓名印・雅号印・引首印をまとめて三顆一組といいます。 成語印成語印せいごいんは詩句名言などを刻するもので、現在作品として表現されるものの大半が、この形式です。 収蔵印・鑑賞印書画骨董や書物の所蔵を明らかにしたり、また芸術作品を鑑賞しこれを誇り称えるものとして押されるものです。 篆刻の作り方 検字(字調べ)篆書は、使われていた時代、地域、用途によって字形が異なります。 1つの印のなかに時代や地域が異なる文字を混用しては不自然なものになってしまします。 それぞれの文字の特徴を理解し、正しく辞典を活用しなければいけません。 専門知識が必要ですが、初心者にもわかりやすく編集された辞典を使いましょう。 「標準篆刻篆書辞典」「標準清人篆隷辞典」「漢印文字彙編」 印稿使う字形が決まったら、印面の構成を考えながら印稿を作ります。 印稿用の台紙は、厚めのハガキ程度の大きさの紙が適当です。 ハガキなどの台紙に墨を塗って真っ黒にします。乾いたら刻る印材を台紙に当て、鉛筆で印の大きさを正確に写します。 朱文の場合は、朱墨で印の輪郭(鉛筆で書いた線)を書き、朱墨で文字を書きます。 白文の場合は、鉛筆で書いた輪郭からはみでないよう、朱墨で内側を塗りつぶします。そのあとに刻る文字を黒色の墨で書いていきます。 隣の文字との位置関係や全体の構成を考えながら、墨と朱墨を使って納得のいくまで何度も修正しましょう。 印面を整える市販の印材は、一見平らに見えますが、切り傷があったり、ロウやワックスが塗ってあったりするので、紙やすりで必ず平らに整えましょう。 同時表面に塗ってある蠟やワックスをとらないと、印面に布字するときに墨をはじいてしまします。 紙やすりを使うときは平らな面の上で磨りましょう。 印面は直角、水平でなければならないので、手鏡などの上に印材を置いてチェックします。人間の眼だけに頼ると実は斜めになっていることもあります。 また、紙やすりを使うときは、印材を90度回転させ、この作業を印材が一回転するまでつづけます。力が一方にだけ偏らないようにしましょう。一方向だけでやすりをかけると、力の入れ具合の癖が出てうまくいきません。 印材が平らで、側面が直角になっていれば、水で石粉を流して終了です。 布字(字入れ)印稿をもとに、逆字(左字)で印面に字を書くことを布字ふじといいます。 まず、印面に朱墨を均等に塗り、乾かします。 乾いたら、印稿をもとに逆字(左字)で字を入れます。 逆字なので、印面を手鏡をつかって右上がりになっていないかなど不備がないかをチェックしましょう。 初めから文字を印面にいっぱい入れると、修正が難しくなります。 転写転写は初心者に向いている字入れの方法です。 初心者が上で紹介したような逆字(左字)で字入れするのはかなり難しいでしょう。 しかし、印稿を雁皮紙がんぴし(薄い紙)で転写する方法をとれば、そうした苦労が省けます。 まず、雁皮紙を印稿の上にのせて墨で転写します。 転写した雁皮紙を、朱墨を塗った印材の上にあてて、少量の水で雁皮紙を濡らします。 さらに半紙を上から当て、軽く指先でこすり雁皮紙の水気をとります。 そしてまた乾いた半紙を雁皮紙の上に当てて、筆の頭などの固いものでよくこすります。 充分にこすってから雁皮紙をはがし、転写しきれていない部分(文字が薄い部分)を補筆、修正します。 運刀いよいよ石に文字を刻していきます。 運刀法は大きく分けると、手前に引いて刻る〈引き刀〉と、突いて刻る〈突き刀〉があります。 初心者の場合は突き刀の方が刻りやすいと思います。左手親指を添えると、突きやすいです。 運刀の順序は筆順に順うのが普通ですが、あまり気にしなくて大丈夫です。 補刀と撃辺刻り終えた作品は一度押印してみて、結果を見ながら不備があればそこに補刀ほとうを加え修正します。 また、印の輪郭がきれいすぎるときは、印刀の横の刃ではない部分で軽くたたきます。これを撃辺げきへんといい、古い趣おもむきが出せます。 強くたたきすぎると、印材が壊れてします恐れがあるので注意しましょう。 押印印泥をつけるときは印材を押し付けるのではなく、軽くポンポンと叩くようにまんべんなく均等に印泥をつけます。 印矩にあてて押し、同じ場所に重ねて押す場合は2回までにしましょう。3回も押すと印泥がかぶってしまい印影が重くなります。 印を押すところをあらかじめ爪でこすっておくと、表面がつるつるになり、印泥のつきもよくなります。 ![]() |
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