日本語で使われる文字表記の中には、種類が違っても形がよく似ているケースというのがいくつか存在します。「ニ」と「二」、「タ」と「夕」などがそれですが、「ト」と「卜」もその一種にあたります。これらは見た目がほとんど同じで、区別しにくいというのが厄介なところですが、何か見分けるポイントなどはあるのでしょうか。また、それぞれが表す意味についても気になります。

そこで今回は、「ト」と「卜」の意味や違い、区別の仕方などについて詳しく解説していきたいと思います。

「ト」とは、日本語の音節の1つです。五十音図における「た行お段」に位置する音節を、カタカナで表したものになります。ひらがなで表した場合は「と」で、濁音では「ド」と表記されます。

カタカナの「ト」にはまた、「音名の1つ」という意味も含まれます。この場合、日本音名では「ハ」音から数えて5番目の音にあたり、ドイツ、英、ラテン音名では「G」にあたります。フランスおよびイタリア音名では、「ソ」に該当します。

漢字の「卜」との違いは、「“と”のカタカナ表記を指す」点にあります。見た目も微妙に違っており、カタカナの「ト」の方が、若干小さいという特徴があります。しかし、形で違いを見分けるのは難しいのが実情で、前後の文脈から判断するか、用語検索をかけるのが、区別の方法としては最も有効と言えます。

「卜」とは、「うらな（う）・うらな（い）」や「ぼく・ほく」の読みを持つ漢字の一種です。意味は「うらなう」や「選び定める」で、「亀卜（きぼく）」「卜占（ぼくせん）」「筮卜（ぜいぼく）」「卜居（ぼっきょ）」のように使われます。また人名用漢字にもあたっており、「水卜（みうら）」や「卜部（うらべ）」、「卜沢（うらさわ）」などの苗字で使われています。

「卜」の字は象形文字で、占いのために亀の甲羅などを焼いてできた割れ目の形から、「うらなう」の意味を持つ漢字として成り立ちました。

このように、カタカナの「ト」と漢字の「卜」は、形は似ていても意味は全く違います。 漢字の「卜」は「た行お段」の音節ではないので、濁音を付けることはできません。もちろん、音名を表すことも無理です。同様に、カタカナの「ト」を「うらなう」の意味で使うことも無理となっています。文字入力の際は、この点に気を付けましょう。