伊豆の踊子 伊豆舞女(中日文对照) |
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时间:2007-03-15 01:33:01 来源:TikiTiki|http://ww2.et.tiki.ne.jp/~syoukagi/ 作者:
章 31 出立の朝、七時に飯を食っていると、栄吉が道から私を呼んだ。黒紋附の羽織を着込ん でいる。私を送るための礼装らしい。女たちの姿が見えない。私はすばやく寂しさを感じ た。栄吉が部屋へ上がって来て言った。 「皆もお送りしたいのですが、昨夜おそく寝て起きられないので失礼させていただきま した。冬はお待ちしているから是非と申しておりました。」 町は秋の朝風が冷たかった。栄吉は途中で敷島四箱と柿とカオールという口中清涼剤と を買ってくれた。 「妹の名が薫ですから。」と、かすかに笑いながら言った。 「船の中で蜜柑はよくありませんが、柿は船酔いにいいくらいですから食べられます。」 「これをあげましょうか。」 私は鳥打ち帽を脱いで栄吉の頭にかぶせてやった。そしてカバンの中から学校の制帽を 出してしわを伸ばしながら、二人で笑った。 乗船場に近づくと、海ぎわにうずくまっている踊子の姿が私の胸に飛び込んだ。そばに 行くまで彼女はじっとしていた。黙って頭を下げた。昨夜のままの化粧が私を一層感情的 にした。眦(まなじり)の紅がおこっているかのような顔に幼いりりしさを与えていた。 栄吉が言った。 「ほかの者も来るのか。」 踊子は頭を振った。 「皆まだ寝ているのか。」 踊子はうなずいた。 栄吉が船の切符とはしけ券とを買いに行った間に、私はいろいろ話しかけて見たが、踊 子は掘割が海に入るところをじっと見おろしたまま一言も言わなかった。私の言葉が終わ らない先き終わらない先きに、何度となくこくりこくりうなずいて見せるだけだった。 そこへ、「お婆さん、この人がいいや。」と、土方風の男が私に近づいて来た。 「学生さん、東京へ行きなさるのだね。あんたを見込んで頼むのだがね、この婆さんを 東京へ連れてってくんねえか。かわいそうな婆さんだ。伜が蓮台寺の銀山に働いていたん だがね、今度の流行性感冒てやつで伜も嫁も死んじまったんだ。こんな孫が三人も残っち まったんだ。どうにもしょうがねえから、わしらが相談して国へ帰してやるところなんだ。 国は水戸だがね、婆さん何もわからねえんだから、霊岸島へ着いたら、上野の駅へ行く電 車に乗せてやってくんな。めんどうだろうがな、わしらが手を合わして頼みてえ。まあこ のありさまを見てやってくれりゃ、かわいそうだと思いなさるだろう。」 ぽかんと立っている婆さんの背には、乳飲み子がくくりつけてあった。下が三つ上が五 つくらいの二人の女の子が左右の手につかまっていた。きたない風呂敷包みから大きい握 り飯と梅干とが見えていた。五六人の鉱夫が婆さんをいたわっていた。私は婆さんの世話 を快く引き受けた。 「頼みましたぞ。」 37/40 首页 上一页 35 36 37 38 39 40 下一页 尾页 顶一下 回首页 |
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